『山の音』

先日、観た『晩菊』が思いっきり、芸達者の競演であり、アンサンブルだっただけに、はからずして、対照的なまでに「圧倒的、スター!のいる映画」との、趣の差に、「ほ〜ぉ」なものがありました。
妻がオコサマすぎて物足りない?と、女道楽がやめられない夫に頭をいためる同居の老夫婦。それでも懸命につかえる嫁(原節子)を不憫に思い、ますます愛情を注ぐ舅なのですが…
こんなにも、可憐で美しいお嫁さんに「お父様…」と、心を込めて慕われたら、初老の男心、胸ときめかない方がウソですよね。(これこれ)
山の音 [DVD]
節度ある、微妙な背徳の気配が、プアズンとなり、密かな香気となって、たちのぼります。モノクローム画像の効果もあいまって、巨匠の手腕と、大スターの圧倒的美貌を前。えもいえぬ香りにクラクラ…。
それにしても、上原謙といえば「往年の大スター」の名のもとに、知った順番が、加山雄三パパであり、なまじワイドショーの、大林雅美との再婚&離婚騒動(?)で、だったもので、ナニでしたが、美男子であるのみならず、これほど「うまい俳優さん!」とは知りませんでした。
この作品では、要となる冷酷な夫を好演。きっと、本当は、かなりディープな男女の機微が何重構造にもなっていそうですが、そのあたりは天下の川端康成(原作)と成瀬巳喜男監督の天才タッグマッチ。
「…さすがだわ…」と唸ってしまったのでした。
でも、昨今のコメディ作品ならいざしらず「鼻血タラ〜ッ」なシーンを描いて、これほど(あまりの美しさと、あやしい雰囲気に)ドキドキ… には、ひたすら平身低頭
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『多趣味人カインの楽天的生活』川端康成『山の音』
『多趣味人カインの楽天的生活』成瀬巳喜男監督『山の音』