『妻』

いつか観てみたいなぁ…と思ってた成瀬巳喜男映画。それなりに、心の準備はしてたつもり、だったけど、けっこうタマゲました。
だって、もしも、恋愛中。こんな女性の図を見たら、百年の恋も冷めるのでは?ってな、食事中の微妙な、はしたな仕種のワン・ツー・フィニッシュ(!)。
それを、あの天下の美人女優。高峰三枝子が演じるんですもの… 思わず、タジタジ。台本を書いた方も、堂々と自然に演じた側も「…勇気あるなぁ…」と舌を巻くことしきり。(このイラストが、結構。雰囲気で笑える 
ストーリーは、倦怠期夫婦の、ありがちな崩壊劇なんですが、細かなディテールの積み上げが尋常でないこと。
最初は「な〜んか、雰囲気やテンポが小津安二郎に似てるなぁ…」と感じてたのですが、このあたりの徹底した観察眼が、「やはり、世界を唸らせた監督さんだなぁ…」と感じてしまったのでした。
ただ、考えようによっては、《『ザ!鉄腕!DASH!!』は、コロンボのコートである》説同様。妻のはしたな仕草も、夫(上原謙)の、うんざり顔も、映画マジック&天下の美男美女が演じてこそ?! 普通の人だと「それ、あえて、大画面では見たくな〜い(しかも、お金払って)」ように思われて。
個人的には、若き日の三国連太郎が、不思議な印象で、心に残りました。
画学生の下宿人を演じてるんですが、ちょっとオネエ入ったような、クセのある役で、独特の濃ゆい顔が、存在感抜群! 気のせいか、現在の北村一輝に似てるような… (佐藤浩市は、母親似、だったのね)
それは、さしずめ『波止場』や『欲望という名の電車』における(ギラギラした)マーロン・ブランドに驚き、そして感心した感触に近いものがあった…かも。
で、思い出したのですが… この作品。ある意味、「そこまでやる?!」なリアリティは『欲望という名の電車』に近いものがあったかもしれません。
時代や周辺事情が変わっても、人の心は、ほとんど変わらないんだなぁ、感心。
本日のトラックバック
うねさんの『やっぱ、宇宙って超不思議』「妻」